本年度には、当研究の拝啓となるダム湖湖面の汚濁に関する報告を研究発表した上で、当研究に着手した。当研究の背景は農地からの排水が流出してゆくであろうダム湖湖面の水質に言及したものである。詳細は別枠に紹介した研究報告と図書に示したが、要点は(1)湖面で植物プランクトンが繁茂した状態と、茶褐色の濁水が流入した状態との2つが同時に発生することは経験的に頻度が小さく、このことがランドサットなどの衛星を利用した湖面のモニタリングに役立つ可能性が大きいこと、および(2)汚濁の少ないジャティルフルダムについて求めた固形浮遊物の沈降速度と湖水の滞留時間は安濃ダムの湖水と比べて良いという訳ではなかった、したがって、ダム湖の有する浄水機能には何か別の要因を探す必要がある、といったことであった。本年にはこういったダム湖の上流側にある農地からの暗渠排水を考えて、三重大学附属農場での現地調査と室内実験に着手した。その結果、現地観測結果から、(3)暗渠排水の電気伝導度(EC)の大きさは短い時間変動にはあまり左右されず長期的な視点で捉える必要性があること、(4)短時間変動する可能性の大きいものとしては濁度が考えられること、および、室内実験で(5)暗渠管周囲の疎水材としてスラグを用いることで、通水機能を落とすことなく排水中の何割かのCODの低減を期待できることなどが確かめられつつある。スラグとの比較には従来良く用いられているものを参考に、もみがら、貝殻、グラスウ-ル、およびガラスビーズを使用した。
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