研究概要 |
理論的な背景に依拠して河川における水質環境基準を達成するには,水質ダイナミックスを考慮に入れ,許容できる汚濁負荷量の総量と流路に沿った汚濁量の適正配分が推定可能な最適化モデルを構築することが基本的に重要なこととなる.昨年度は,単一河川流路についての基本形を拡張して,任意に分合流する河川網において,任意の数及び位置に汚濁負荷源がある場合の,最適制御モデルの構築を試み,モデル性状の精査とその適用性の検証を行った.本年度は,これまで論議してきた決定論的な数理モデルを,モデルに含まれるデータの不確実性を考慮した確率論的なモデル(ロバスト最適化モデル)へと,展開,拡張させる試みを行った.すなわち,モデルに含まれる河川流量,水深,流水断面積,水温,風速,塩分濃度といったパラメータの値は不確実に変動するのが一般であるが,これらのパラメータの不確実に変動する状況すべてを有限個のシナリオ集合に分類し,各シナリオの生起確率を用いて,全シナリオにおける最適解を一括して考察できるような数理モデルの開発を行った.このモデルによれば,決定論的なモデルに比べて,モデルに含まれるデータの不確実性に対して感度を低くした解が得られ,現実の事象に即応したより柔軟で的確な河川水質の制御政策が誘導できる.こうして構築したロバスト最適化モデルを,想定したある単一河川流路に適用して,従前の確率計画モデルとの比較の中で,その有効性を検証した.その結果,モデルは意志決定者の意図を的確に反映した解を与え,河川の水質管理を行う際の代替案作成に,確率計画モデルよりも優れて有効なものとなることが明かとなった.
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