研究概要 |
ガラス室内に設置した計量型ライシメータ(直径1.5m,土層厚1.6m,海岸砂充填)を用いて,平成9年8月中旬から約1カ月半の間,オレンジを対象に塩水潅漑を行った.潅漑水はNaClとCaCl_2によって,2,000mg/lの塩分濃度(電導度:4.0dS/m)になるように調合した.潅漑は点滴潅漑方式によって毎日行い,毎日の潅水量は,前日の蒸発散量の1.2倍とした.測定時期の日蒸発能は,ガラス室内に設置した直径20cmの小型蒸発計で最大7.2mmであり,日蒸発散量は水道水で潅漑した場合(対照区),最大4.2kg/day(ライシメータ面積を用いて水深に換算すると,2.4mm/day)であった.対照区の蒸発散量と計器蒸発量との間には相関係数0.955の強い相関があった.塩水潅漑による蒸発散量の影響は潅漑開始直後から表れ,2週間経過した時点で塩水潅漑条件下の蒸発散量は普通水潅漑条件下に比べて約20%減少した.減少割合の変化はほぼ直線的であった.ライシメータ底部からの排水の電導度は潅漑開始直後の0.4dS/mであり,塩水潅漑を開始後,徐々に上昇し始め,最終的には0.6dS/m程度の値を示した.塩水潅漑終了跡,3週間にわたって毎日10kgのリーチングを行った結果,排水の電導度は急速に上昇し,ピーク値1dS/m強を示した.有限要素法を用いて,塩水潅漑開始後ならびにリーチング潅漑開始後の土壌水分と土壌塩分の挙動に関するコンピュータシミュレーションを行った.理論解や他の公表プログラムとの比較によって,プログラムのアルゴリズムは正しいことが確認できたが,水分と塩分の実測値と比較すると,定量的には十分な精度が得られなかった.表面ならびに底部の境界条件,水分ならびに塩分移動に関するパラメータの値などの再検討が必要である.
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