研究概要 |
圃場整備からの雨水による土壌流亡量を解明するために,農地から採取した二種類の土(植壌土と砂壌土)をそれぞれ傾斜した木製侵食箱に均一に敷き詰め,上流から2種類の表面流を一定時間流し,この間の流出水量と流出土壌量を測定した.流出土壌の粒度分析には,まず,ふるいで砂粒子と他の粒子とを分離し,次の段階でろ紙によるシルト粒子と粘土粒子を分離するという方法を採用した.各実験を通して,侵食された土粒子と実験前の土壌の成分の割合を分析した.これらの分析結果に基づいて,侵食土壌の粒度の特性を比較検討した. 1)植壌土では微細粒子の移動が多く見られた.表面水量を増加すると,砂粒子と粘土粒子の侵食量が増加し,シルト粒子の侵食量は減少した.さらに,植壌土,砂壌土の双方ともに粘土粒子は実験の初期間に多く流出する傾向を示した. 2)砂粒子は侵食量が最大になる期間に最大の侵食量を記録した.また,砂粒子の侵食が増加していく状況下でrillの形成の開始が観測される. 3)植壌土では,侵食土中のシルト粒子と粘土粒子は元の土(実験前の土壌)よりも多く,砂壌土では,侵食土中の砂粒子は,表面流量が大きい場合のみ,元の土の成分よりも多いことが分かった. 4)ほとんどの実験条件に対して,元の土の粘土粒子の割合より,侵食土中の粘土粒子の割合が多いことが分かった. 以上のように,農地の侵食土壌の中では微細粒子の割合がかなり多いことが示唆され,微量成分の流出や水質等に重大な影響を与える土壌侵食機構の基礎的な関係が明らかにされた.
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