本年度は、風化程度の異なる二地点(愛媛県越智郡朝倉村・同今治市野間町)から深度別に供試土を採取し、同一母岩で深さ方向に風化程度が異なるマサ土の強度定数とpF値との関係について検討を行った。 風化程度の判定は、粒度分布、pH値の両面から行った。剪断強度の測定は、標準型一面剪断試験機を用いて圧密排水条件下で行った。pH値の測定はpH3.0未満は自記式テンシオメーター、pF3.0以上は遠心法によりそれぞれ求めた。 粒度試験から求めた各試料の砂分は、朝倉上層:45%、朝倉下層:80%、野間上層:69%、野間下層:90%であった。またpHは、朝倉上層:4.2、朝倉下層:5.9、野間上層:4.7、野間下層:6.1となった。一般に粗粒分が多く、pH値が高い程、風化程度は低いと言われており、両地点とも上層の方が風化が進行していた。二地点間の風化程度を比較すると、野間では上層でも砂分が69%、pH値も4.7と共に高く、風化の進行度は低かった。強度定数とpF値との関係においては、朝倉の場合は、上・下層ともpF2.5付近に粘着力・内部摩擦角の変化点が明瞭に認められた。これに対し、風化が極端に進行していない野間における粘着力は、pF2.5付近に変化点の存在する傾向が現れるものの、朝倉上・下層と比較して顕著ではなく、内部摩擦角はpF値に関係なくほぼ一定値を示た。 以上の結果、同一母岩で深さ方向に風化程度が異なるマサ土の強度定数の変化点は、朝倉では従来、他試料で明らかにしてきた結果と同様にpF2.5付近であるのに対し、風化が極端に進行していない野間では、粘着力の変化点が明瞭には現れず、内部摩擦角はpF値に関係なくほぼ一定値を示し、マサ土の強度は風化程度に強く影響を受けて変化することが明らかとなった。
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