近年の地下環境汚染に関し、農薬、肥料等の物質は、土壌や地下水中における種々の鉱物、腐食物質などの影響下で、多用な化学的作用を受ける状況にある。良質な水資源として、地下水への依存度の高い地域においては水質管理の点から、これらの物質が地下環境へどのような物理化学的過程を経て輸送されるかについての検討が急務となる。本研究では、地下水中における複数の化学種の化学的な相互作用を考慮した物質輸送解析のための数値モデルについて新たに検討を加え、この数値モデルの妥当性について、室内実験結果との比較により検証を行った。従来の単一化学種を対象とした解析ではなく、複数の化学種が相互に影響しあう化学反応系の物質輸送解析という点に、これまでにない特徴がある。まず、数値モデル構築のための基礎理論展開においては、陽イオン交換反応を主に取り上げ検討を加えた。数値モデルの妥当性については、撹乱土壌を用いた室内実験への適用および現地を想定して、畑地で採取した不撹乱土壌中でのカリウムの輸送機構について検討した。実験結果と数値解とは、ほぼよく一致し、本モデルの妥当性を確認した。また、化学反応項の空間分布を求め、化学的な輸送過程を、数理的に明らかにした。実験結果からは、液相と固相のイオン交換を支配する選択係数が、カリウムの場合固相の吸着濃度に依存して変化することを明らかにし、これを、数値モデルの中に新しく組み込むことを提案した。
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