パ-マカルチャー理論(以下「PC」と略記)を応用した流域空間での環境共生型の持続的暮らしのデザイン手法の開発の課題と枠組みに関する1年度目の研究成果である。研究対象地は、長野県天竜川流域の飯田市、神奈川県相模川上流部の藤野町篠原地区、山形県最上川上流の白川沿いの飯豊町、福島県真野川上流の飯舘村大倉地区であり、PCでの、連関性、多機能性、複合化機能性、ゾーン・セクター計画、生物資源、エネルギー循環、小規模集約システム、遷移と進化、多様性、エッジ効果のデザイン10原則により、これらの対象地区での空間構成の原理の把握と、その利用の歴史的変遷、持続性における課題を明らかにした。屋敷周囲の生活と密着した領域では多様で複合的な利用空間として日本型のPC的デザインの側面はあり、主に老人層によって支えられているが、次の世代に明確に伝承されていないことが明確となった。本研究では地域住民での共同的でPC的な暮らしの再構築のデザインを提示し、また、都市住民を主体としたPCの実践的NPO組織の活動や、都市農村交流型のイベントでの暮らしの再認識の重要性が指摘できた。海外との研究交流はPC第六回世界大会に出席し、日本での農山村地域でのPC的評価や実践活動を提示し、また豪州でのPCの実践の場を調査し、流域の上流部だけでなく、下流部での都市地域でのPC的実践、シティファーム等のア-バンPCの必要性を痛感し、広域的な流域空間での交流と総合的なデザインの必要性が明確となった。PC的視点からの流域空間のデザイン手法の課題は、上流部での伝統的な生物資源の総合的な保全と活用のための技術の伝承と新たな技術の再構築と、その担い手を農村民だけでなく、都市住民を交えたNPO的組織とそのネットワーク化、そのための制度的な改変と、上下流での保全と活用のための実践的交流の枠組みの構築が必要となっていることが明確となった。
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