パーマカルチャー理論(以下「PC」と略記)を応用した流域空間での環境共生型の持続的暮らしのデザイン手法の開発に関する2年度目の研究成果である。研究対象地は、長野県天竜川流域の飯田市、神奈川県相模川流域、山形県最上川上流の白川流域の飯豊町、福島県真野川上流の飯舘村大倉地区である。主に、流域の上流部での行政及び、地元住民との環境と共生した持続的暮らしづくりの場の形成手法や技術のあり方について数回のワークショップや現地調査、アンケートにより検討した。PCの視点からの複合的で持続的なデザインを可能とする地域資源はこれらの地域に十分に存在するものの、その資源を有効につなげる技術や手法の喪失、欠落、及びそれを担う住民サイドでの意識化の欠落、特に水環境と暮らしの関係でのつながりの欠如が指摘できた。上流住民に対しての持続的な暮らしのモデル的提示による暮らしのあり方に関する意識変革の機会の提示の必要性、及び、環境共生型の集住の場としての集落の再構築のデザインの確立と、更に「新しい村づくり」を試行し、下流部の都市からの農的で持続的な暮らしを希望する新規住民達による持続的な暮らしの場づくりの活動に関しての支援体制が必要となる。この点で先駆的な取り組みを始めている藤野町でのパーマカルチャー・センター・ジャパンでの持続的な暮らしのデザインに関するワークショップの実践は意義深いものである。その中で具体的に例示されている水の循環デザイン、農林地の持続的デザインは有効であり、それを参考としてエコビレッジを実現するためのイメージ・デザインを提示することができた。この成果はデンマークのエコビレッジ・ムーブメントでのレビューにより、世界的なレベルで実証できたと考える。また、流域的広がりでの環境共生で持続的なデザインとして、バイオリージョンナルデザインの有効性が指摘できた。
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