北海道の河川は春先に年間の濁度の最大値を示すことが知られている。これには流域土壌の性質、地形の特性が関与するものと考えられるが、丘陵地にも及ぶ農地空間の発展が影響していることも見逃せない。また、農地造成、水田の代掻き時にも多くの濁質流出をみることは生物生産環境を整備する上で注意しなければならない。そこで、本研究では農地の整備、農作業、農地の保全管理など一連の生物生産活動中の水田からの流出水による濁質の流出機構を水文学的に明らかにしようとするちのである。この現象把握と原因の究明のために水田におけろ調査と自然流域における濁度の発生といった2つの観点から解析を進めることとする。1)濁度の実態を明らかにするために水田排水の濁度を観測する。2)水田の作業による水田の濁質の変化を調査する。3)用水の濁度を調べる。4)水源となる河川水の濁度変化特性を調べる。平成10年度は、北海道の多雪地域における水田農地に試験区を、また、水田地帯に続く丘陵部に発達した小河川流域を試験流域として、濁度計による観測を行った。水田では採水調査を行った。その結果、代掻き期間の排水路における濁度の上昇は著しいが、水田における作業後の濁度の低減も顕著といえる。用水が河川取水の場合、排水路の濁度は用水の濁度の影響が考えられる。北海道のような融雪水による用水の供給形態である場合、河川の濁度についても考えてみる必要がある。融雪期における河川水の濁度増加の原因として山地における濁質の供給機構が特筆される。積雪・融雪水の流動によるエロージョン(傾斜地土壌の凍結融解による膨軟化と土壌の融雪水・河川水による)流出で、水田における代掻きによる水田土壌の膨軟化流出に相当するものと考えられる。
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