研究概要 |
風による農薬のドリフトは散布対象作物への付着性を低下させ,隣接する他の作物や人畜へまでも影響を及ぼす。本研究はドリフトの要因となる噴霧ノズルの種類(15種類),散布圧力(0.49〜1.96MPa)と粒径,散布高さ(20〜80cm)や風速(0〜2.2m/s)の影響について風洞実験を行い,ドリフト特性を実験的に究明した。 1.供試ノズルの吐出量は0.3〜8.3L/min,噴霧速度が2.8〜56.8m/s,散布幅は48〜330cmであり,4つの散布パターンに大別される。平均粒径は99〜1,424μmであり,圧力が高くなるといずれのノズルも小さくなる。 2.送風時の散布パターンは風下側に分布が移動し,通常ノズルはドリフト防止ノズルよりもその変化が顕著に現れた。ドリフト距離の対数値は平均粒径が大きいノズルほど直線的に減少し,また同程度の粒径では噴霧速度が大きいノズルほどドリフト距離が小さくなり,空気中の噴霧粒子の運動解析結果と同様の傾向を示した。 3.ブームスプレーヤ用のドリフト防止と通常ノズルの場合,圧力0.98MPa,散布高さ40cm,風速1.11m/s以内の条件では両ノズルともドリフト距離は9cm以内であり,両者の違いは認められない。しかし,風速1.67m/sになるとドリフト防止ノズルはさほど変化しないのに対して通常ノズルはドリフト距離が15cmとなり,前者の約2倍のドリフトとなった。また風速1.11m/s,散布高さ60cmでは,ドリフト防止ノズルのドリフト距離が16cmであるのに対し,通常ノズルは33cm,散布高さ80cmではそれぞれ32,78cmとなった。したがって,散布高さ40cm,風速1.11m/s以内の条件では両ノズルのドリフト距離に違いは見られないが,それ以上の風速と散布高さになるとドリフト距離は指数曲線的に増加するものの,ドリフト防止ノズルは,それを半分以下に押さえることができる。
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