研究概要 |
散布幅の広いブームスプレーヤでは,ブームを作物や地面に接触させないようにするために両先端を高くして作業することから,ノズルの取付角度も変化し,ドリフトによって均一散布が困難になる。本研究は,ノズルの取付角度が変化した場合のドリフト特性を風洞実験によって明らかにし,また近年簡易型のエア-アシストノズルが導入され始めていることから,そのドリフト防止効果についても検討した。 1.供試ノズルはブームスプレーヤ用の2種類である。無風時の落下量分布は,取付角度が変化するとノズルが向いている方向に分布が広がり,散布幅も拡大した。送風時の通常ノズルは,風によって分布が風下側に移動するとともに,ノズル中心部でのピークが小さくなり,分布形状は平坦化した。一方,ドリフト防止型のフォームノズルでは無風時の分布形状を風下側に15cm程度平行移動したような状態となり,分布形状の変化も少ない。 無風時のドリフト距離は取付角度が風上側-30°から風下側+30°へ変化すると両ノズルともほぼ直線的に増加し,その値は-39〜43cmであった。送風時のフォームノズルでは各取付角度の無風時と比べてドリフト距離は約15cm大きく,無風時の曲線を上方に平行移動したように推移した。しかし,通常ノズルは取付角度-30°から+10°の範囲でドリフト距離は無風時と比べて20〜40cm大きく,取付角度よりも風の影響を強く受ける特性を示した。 2.供試したエア-アシストノズルは,円筒型の金網かごを高速回転させ遠心力によって薬液を水平方向に霧化し,その上の直径300mmのファンで下向きの風を発生させて作物に農薬を付着させる構造である。平均粒径は150μmと小さく,散布幅は290cmと広いことから,ほとんどの噴霧粒子はファンの外側に落下する。ドリフト距離は同程度の粒径のノズルと比較すると大差なく,ドリフト防止効果はほとんど期待できない。
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