研究概要 |
防除作業のアンケート調査では,トラクタ直装式ブームスプレーヤが約7割利用され,タンク容量は800〜1500L,散布幅が13〜18mであり,けん引や自走式ではそれぞれ2000〜5000L,20〜30mであった。防除は5月から8月に集中し風の少ない早朝や夕方に行われ,経営規模の大きい農家ではけん引や自走式などの高能率スプレーヤを利用する傾向が進んでいる。防除回数はバレイショが4〜13回,延散布日数は5〜25日と最も多く,豆類2〜9回で2〜16日,テンサイ3〜8回で3〜13日,小麦2〜8回で3〜23日にも及び,年間の総防除回数は平均で28回,延べ34日にもなる。防除に対する意識では,病害虫の発生程度を重視した適期防除が行われているものの,特に降雨や風の状態に注意を払っており,多少の風でも散布作業を行えるドリフト防止技術の開発を望んでいる。 開発したドリフト防止技術については,ブームを制御しない場合を想定した散布高さ80cmの場合,風速0.5m/s以下では通常ノズルとドリフト防止ノズルはともにドリフトが少なく大差ない。しかし,1.5m/sでは前者がドリフト距離7.3mで被覆面積率1%に達し,後者は2.5mであり,3倍程度の違いが現れた。また,自動制御して散布高さを40cmに維持した場合,ドリフト防止ノズルは2.9m/sの風速でもドリフト距離が5.2mに留まり,ブーム高さ制御とドリフト防止ノズルの有効性が確認された。このように,両ノズルとも風速に対してドリフト距離は2次曲線的に増加するが,ドリフト防止ノズルは慣行の防除作業に比べてドリフトを半分以下に抑えることが可能となり,またブーム高さ制御装置を利用することによって,通常の作業条件より風が強い2.8m/sの風速でも散布作業が可能になることから,本研究で開発したクリーン防除のためのドリフト防止技術は有効であると言える。
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