研究概要 |
本研究は,防除作業の現状を調査し,風洞実験によってドリフトのメカニズムを総合的に解析し,それをもとにブ-ムスプレ-ヤにおけるドリフト防止技術を開発することを目的とした。 1. 十勝地方での防除作業の現状は,5月から8月にかけて繁忙期を迎え,風の少ない早朝や夕方に散布作業が特に集中することから,経営規模の大きい農家では散布幅20m以上のけん引や自走式の高能率スプレ-ヤを利用する傾向が進んでいる。防除に対する意識では,病害虫の発生程度を重視した適期防除が行われているものの,特に降雨や風の状態に注意を払っており,多少の風でも散布作業を行えるドリフト防止技術の開発が望まれている。 2. 風によるドリフト距離の対数値は,平均粒径が小さいノズルほど直線的に大きくなり,噴霧速度の小さいノズルほど大きくなる。また散布高さ40cm風速1m/s以上では,散布高さと風速が増すほどドリフトは2次曲線的に増加するが,ドリフト防止ノズルはそれを半分以下に抑えることができる。さらに,ノズルの取付角度が変化するとノズルが向いている方向に散布パタ-ンが広がり,特に風下側でのドリフトが増加する。したがって,ドリフトを抑えるための散布技術としては,まず粒径の比較的大きいフォ-ムタイプのドリフト防止ノズルを選定し,風の少ない気象条件で散布作業を行うことが重要である。また,長大ブ-ムのスプレ-ヤでは,ブ-ム高さをできるだけ低い適正高さに維持し,さらにブ-ムを水平に保つ自動制御装置の利用は必要不可欠である。 3. 開発したブ-ム高さ自動制御装置と選定したドリフト防止ノズルを利用することによって,慣行の防除作業に比べてドリフトを1/3以下に抑えることが可能となり,また通常の作業条件よりも風が強い2.8m/sの風速でも散布作業が可能になる。したがって,本研究で開発したクリ-ン防除のためのドリフト防止技術は極めて有効であると言える。
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