近年、穀物乾燥貯蔵施設において一時貯留中あるいは籾タンク内での貯蔵中に穀物が変質する事故が増加している。穀物の含水率が高く、また、貯蔵温度が高くなるほど、呼吸作用が活発となり、発熱して高温となったり、周囲が嫌気的であれば発酵が始まる。したがって、穀物の変質は、温度または二酸化炭素やエタノール等のガス濃度の測定により、異常を検知するのが効果的であることはすでに報告されている。 一定期間以上の長期貯蔵中における穀物の変質は、通常貯蔵される場合より高い含水率の穀物が混入することが原因となる。それは、結露のように急激に一部の穀物が極端な高含水率となる場合と、乾燥作業の不足等によりやや高含水率の穀物がかなりの割合で混入する場合が想定される。それらを二酸化炭素濃度の測定により検知することを試みた。いずれの場合も、貯蔵温度の影響が大きいことが明らかになった。前者については、貯蔵温度が15〜20°Cであるとき、貯蔵籾重量の0.07%程度の結露籾が存在すれば、検知が可能であった。これは、200tの乾籾中に150kg程度の高含水率穀物が発生することに相当し、きわめて少量の変質でも検知が可能であることを意味する。後者については、混入する高含水率穀物の含水率が17%WB程度以上になると、その含水率によって二酸化炭素濃度が変化することが認められた。したがって、そのような状況の検知が可能である。また、いずれの場合においても、二酸化炭素の拡散により容器内のすべての位置でガス濃度の測定値は一致しており、測定位置は任意に選べることがわかった。
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