穀物乾燥施設での変質事故が後を絶たないという状況である。その変質をできる限り早期に検知する方法を考察した。第1章では、穀物の変質を化学的変化、生理的変化および生物的変化に分類してその機構を整理した。その結果、変質は、いずれの場合も二酸化炭素濃度の増加を伴うことが見出された。そこで、穀物貯留ビンにおいて二酸化炭素濃度を計測することにより、変質の兆候を検知する可能性を検討した。第2章では、穀粒の呼吸作用による二酸化炭素および酸素の濃度変化をオンラインで測定するために本実験で用いた濃度計の検出原理や緒元を示した。第3章では、貯蔵穀物の含水率が高く、貯蔵温度が高いほど二酸化炭素濃度の増加速度が大きいことが確認された。つまり、貯蔵ビン内で二酸化炭素の濃度を計測することによって変質の兆候をとらえることができると判断された。第4章では、収穫された高水分籾が乾燥施設で処理されるまでの履歴が籾の品質に与える影響を調査した。籾の含水率、放置温度および放置時間が品質に与える影響を二酸化炭素の発生量、表面色等から測定した。それぞれの条件により測定値に差は認められるが、相互作用があると見られ、一定の関係を得ることはできなかった。第5章では、貯蔵ビン内での結露が原因となる変質の検知を検討した。貯蔵籾の0.04%に相当する籾が結露の影響を受けたときにもビン内の二酸化炭素濃度の変化を検知できた。第6章では、実際のカントリエレベータの籾貯留ビンで結露想定籾を堆積籾の表面に配置し、二酸化炭素濃度の変化を測定した。その結果、濃度は上昇し、結露の発生をとらえることができた。ただし、籾層内での二酸化炭素の拡散は遅く、迅速に拡散させる工夫が必要となった。第7章では、下部から上方へ送風することによって二酸化炭素を強制的に拡散させた。その結果、二酸化炭素の発生を短時間で検知できることがわかった。
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