研究概要 |
2年にわたる研究計画では,果実重量と果皮の色の測定方法,マニピュレーターの構造に対して試作・検討を行った。過去に計測したナシ果実(赤ナシ系統の豊水)の表面の色彩・色差データ(L^*a^*b^*表色系で評価したもの)を基準として,主として果実の花落ち部と赤道部の色を計測するために,自然光と人工光のどちらが適しているか,人工光を用いる場合は発光部に何を用いるかと,カラーセンサーによる受光部について試作・検討した。発光部については,発光タイミングや発光持続時間の長さ,発光光の変調方式等,発光部の制御について検討した。受光部については,センサーから出力されるデータは入射光の明るさと色温度に影響されるため,最初に電流出力を対数増幅回路を通して線形量に変換した後,照度計(ルクスメーター)による周囲の明るさの補正,センサー出力のR,G,Bの値の比による照明光源の色温度の補正,逆光による明度と光量の補正について検討した。これらの処理には,複雑かつ同時性を要求されるため,制御用のコンピューターと複数のボード型コンピューターの組み合わせによる分散処理を試みた。次に,ステッピングモータによる多関節型把握部を試作し,感圧素子とA/D変換器の組み合わせで果実の圧縮特性をリアルタイムで計測しながら最適把握力を求める,一種の自己学習型適応制御システムを試作した。この把握部には重量測定用のロードセルを組み込み,果実を下から支えると同時に果実の重量を測定する方式を採用した。今後はフィンガー及びマニピュレーターをハンドリング機構に組み込み,果皮の表面の色と重量からナシの熟度を判定し,収穫適期かどうかの判定の表示と適期の果実のみを把握力制御を行いながら収穫するハンドリングシステムを完成させる予定である。
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