平成8年度は幼植物体の形状情報を対象とした画像計測手法の開発を行うための各種実験装置の製作を中心に活動した。以下に概要を示す。 (1) 画像撮影装置の製作 培養瓶を回転台に乗せ、回転させると同時にカメラで定角度ごとに撮影するターンテーブル撮影装置を作成した。この装置により、カメラの幼植物体に対する仰角を数段階に変更することにより、幼植物体を水平及び垂直方向の様々な角度から撮影した画像群が得られる。カメラには高感度型の冷却CCDビデオカメラを採用し、その制御のために、小型のノート型パソコンを手当した。また、今回の対物レンズに取り付ける光学プリズムを手当し、カメラで葉面の分光反射特性を同時に記録できるように配慮した。撮影の際の、光源としては、通常の一般散乱光型ストロボ装置に加え、任意の幅のスリット光を照射可能なスリット光源装置を製作し、様々な撮影条件を設定できるように配慮した。 (2) 葉傾斜角の2・3次元分布の高速演算用コンピュータの設置と演算アルゴリズムの最適化 本手法の基本的計算処理の概略は以下のようである。すなわち、まず初めに、撮影された各画像を小区画に分割し、各区画の2次元パワースペクトル分布を計算する。ここでの各小区画のパワースペクトル分布から得られるくさび状特徴量は、そこに含まれる物体像の傾き、すなわちこの場合は葉傾斜角を反映する。さらに、得られた葉傾斜角の2次元分布を代表的画像再構成法である逆投影法で、3次元に再構成することで葉傾斜角の3次元分布が得られる。以上の一連の計算処理は、高速フーリエ変換を含む複雑かつ高度な演算が中心であり、さらには対象とする画像データ量が膨大となるため、一回の処理だけでも膨大な処理時間が必要となる。このため、研究の効率性および手法の実用性をそれぞれ確保するためには、極めて高速なコンピュータの使用などの計算処理の高速化が肝要となる。そこで今回は、演算アルゴリズムの高速化への配慮などの最適化作業に加え、最新のRISC(Power PC 604e 200MHz)型CPUを内蔵した高速パーソナルコンピュータを手当し、この問題の効果的解決を図った。
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