本研究は、知能的なシステム科学的アプローチを用いて貯蔵プロセスにおける果実の生理生態的な特性を明らかにし、モデリングおよび最適な環境制御を行い、果実の品質改善を実現する。 1.数種類の果実(ミカン、トマト、リンゴなど)を用いて、環境変動に対する果実応答を計測した。果実応答として、果皮色(追熟特性)と水損失(新鮮さ)を用いた。果皮色は色彩色差計で、水損失は重さから電子天秤で計測したが、これらの応答は非破壊、連続、自動計測が可能であり、コンピュータ制御に対応できることが分かった。 2.環境変動に対する果実応答は、ダイナミックに変動し、非線形特性を示した。またその動特性(ダイナミクス)は時間的に変動した。貯蔵プロセスは、動的、非線形、時変システムとして定義できた。 3.ニューラルネットワークを用いて環境条件(入力)に対する果実応答(出力)を同定したが、3層のそれは入出力間系をうまく同定でき、最適制御のためのモデルが構築できた。 4.最適制御を目指して、貯蔵果実の追熟をできるだけ遅らせる(色の変化を最小とする)温度の制御法を検討した。目的関数は果実の追熟度(出力)であり、入力は温度である。 5.Heat Treatment(熱処理)とは、果実を一旦30℃以上の高温下に置き、その後低温に置くと、エチレン生成が低下し、追熟が抑制される。しかしこの場合、どのような温度制御が最適か不明である。 6.最適な温度の制御法をモデル・シミュレーションから探索したが、遺伝的アルゴリズムを用いることによって、短時間で効率よく探索できた。
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