本研究は、ファジイ理論、ニューラルネットワーク、遺伝的アルゴリズムを用いて、貯蔵プロセスにおける果実応答の計測、同定、最適化法を開発し、貯蔵果実の品質改善のための基礎的な知見を得た。 1.数種類の果実を用いて環境(温度と湿度)に対する果実応答(水損失、果皮色)を計測した。環境変動に対する果実応答はダイナミックに変動し、非線形特性を示した。またその特性は時間的に変動した。このため、貯蔵プロセスは動的、非線形、時変システムとしての取り扱いが必要と分かった。 2.3層のニューラルネットワーク(NN)は環境変動に対する果実応答の動的、非線形挙動の同定に有効であり、最適制御のためのモデルが構築できた。また、遺伝的アルゴリズム(GA)はモデルのシミュレーションから短時間で効率よく最適値の探索ができた。 3.貯蔵環境の制御はファジイ制御が有効と考えられる。NNとGAを用いて、ファジイ制御器のメンバーシップ関数と制御ルールを状況に応じて最適に調整する制御法を開発し、伊予柑貯蔵庫の湿度の最適制御に適用した。入力は換気扇による単純なオン-オフ操作である。制御の目的は最適な貯蔵湿度85%RHに常時保つことである。本ファジイ制御法はなめらかな湿度制御を実現し、その制御パフォーマンスは従来法に比べ良好であり、本制御法の有効性が確かめられた。 4.最後に、NNとGAを用いて、貯蔵果実の追熟をできるだけ遅らせるための最適な熱ストレスパターンを探索した。2つの熱処理法が得られた。1つは最初の1日のみ熱ストレスを与える単一熱処理、もう1つは周期的に熱ストレスを与える間欠的熱処理である。シミュレーションでは間欠的熱処理、単一熱処理、低温処理(従来法)の順に追熟は抑制された。実際にも適用し、本制御法の有効性が確かめられた。
|