画像処理により豚の体重を高精度で推定する方法の確立を目指し、本年度は、豚の品種が投影面積と体重との関係に及ぼす影響を検討するとともに、その要因を検討し、品種間差の少ない体重推定式の算出を試みた。育成豚および肥育豚合計323頭を実験に供した。品種はランドレース(L)、大ヨ-クシャー(W)、デュロック(D)、ハンプシャー(H)の4元品種による2元交配、合計12品種である。実験は試作放置枠に供試豚1頭を入れ、ビデオカメラでその上方投影像を撮影、ビデオテープレコーダに録画した。その映像を画像解析装置を用いて白黒の2値化処理し、豚の画像を抽出、体長、平均体幅、投影面積を計測した。投影面積は耳、尾、四肢の画像を手動で削除し、これを修正投影面積とした。撮影直後、電子式体重計で供試豚の体重を測定、体尺器を用いて体高も計測した。 全供試豚における修正投影面積と体重とは指数関係を示した。この回帰式を用いて修正投影面積より豚の体重を推定するときの誤差は±8.1%と大きな値となった。供試豚数の多いLD種、HL種、WW種の3品種別の修正投影面積と体重との回帰式には有意な差が認められた。この差は体高、体長、平均体幅が関与すると推定された。そこで修正投影面積と体重との単回帰式に体高、体長、平均体幅の各因子を乗じた重回帰式を求めたところ、いずれの品種も誤差は減少した。とくに全供試豚の回帰式は体高を考慮することで±6.4%となり、体重推定精度が著しく高まった。重回帰式における次元を求め、次元と誤差との関係を考察した結果、次元の値が3に近いほど誤差が減少し、品種が多くなるほど著しかった。次元数3は体積を意味する。修正投影面積と体高との重回帰式が高い精度を得た理由は、重回帰式の次元が体積に近いためと解釈される。画像処理により豚の体重を推定をする場合、修正投影面積と体高とを計測することで品種差が少なく、精度の高い体重推定値が得られることがわかった。
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