放牧時における牛のエネルギー蓄積量は、その測定が難しいことから、牛舎内で貯蔵飼料と濃厚飼料を給与した研究で求められた増体量とエネルギー蓄積量の関係を用いて増体量から推定されることが多い。しかし、放牧で育成肥育した牛では枝肉中の脂肪割合が少なく赤肉割合が高い傾向があり、放牧育成牛では増体に占める蛋白質・脂肪およびエネルギー蓄積量の割合が舎飼で育成肥育したものと異なる可能性がある。放牧育成牛のエネルギーおよび体成分蓄積に影響を与える主要な要因として、(1)運動のためのエネルギー消費量が大きいこと、(2)飼料源が窒素含量の高い放牧草であるため、摂取飼料中の窒素:エネルギー比が高いことが考えられる。ところが、放牧条件での牛のエネルギーあるいは体成分蓄積量を実測した研究は少なく、育成牛のエネルギー・体成分蓄積量に及ぼす放牧の影響を運動の要因と栄養的要因に分けて検討した研究はほとんどみられない。 本研究では放牧育成牛の産肉特性を明らかにする目的で、(1)放牧飼養、(2)牛舎内で生草を刈り取り給与する育刈飼養(Zero grazing)、(3)牛舎内で貯蔵飼料・濃厚飼料を給与する舎飼飼養の3つの飼養方式により育成牛を同一の増体速度で成長させ、各飼養方式における育成牛のエネルギー・蛋白質および脂肪蓄積量を比較屠殺法により測定し、育成牛のエネルギーおよび体成分蓄積量に及ぼす放牧の影響について栄養的要因と運動の要因を考慮に入れて検討する。放牧飼養と舎飼飼養の違いを検討する試験1および放牧飼養と育刈飼養の違いを検討する試験2をそれぞれ97年および98年の放牧期(5-8月)に実施する。試験1で用いる3ヶ月齢のホルスタイン去勢牛11頭を97年2月に導入し、乾草・濃厚飼料を給与して予備飼育を行っている。現在までの平均日増体量は0.95±0.18kgと極めて良好である。
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