シロクローバは窒素固定能を有し、また高蛋白であることから、草地畜産にとって有用な飼料草として利用されている。しかし界面活性作用を持つサポニン様物質も含有し、採食により同時に体内に摂取される。本年はサポニンにより生ずるルーメン内の泡沫化に着目し、それが草蛋白のルーメン消化・ルーメンバイパスなどシロクローバ含有栄養素の利用性に及ぼす影響について解析した。 1).ルーメンおよび十二指腸カニューレ装着羊に、シロクローバ単一給与(WC区)とシロクローバ単一給与+消泡剤(ルミノン液)投与(WR区)を設定し、シロクローバ採食によるルーメン内泡沫形成が下部消化管流入窒素成分に及ぼす影響について調べた。WC区ではWR区にくらべ十二指腸流入物中のRNA量/窒素量が小さく、かつ十二指腸流入窒素量/摂取窒素量が大きかったことから、WC区では下部消化管に流入する微生物割合が小さく、バイパス窒素量が多いことが明かとなった。 2).シロクローバのルーメン内分解にともなう草中サポニン含量の変化をナイロンバック消化試験により調べた。ルーメン内浸漬時間の増加とともに草中サポニン含量は減少したが、分解率71.5%(20Hr後)でも僅か残存する。泡沫形成に寄与するサポニンのルーメン中への急速な溶出には、採食時のそしゃくが重要であることが明かとなった。 3).シロクローバ利用時に生ずる反芻家畜のルーメン内泡沫化が、シロクローバ含有蛋白を家畜生産に効率よく結び付ける上で有用な機能を有することが本研究により明かとなった。
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