研究概要 |
窒素固定能を有し、高消化性の蛋白を多量に含有するマメ科草の放牧利用は、低コスト畜産物生産にとって大きな意義を持つ。しかしマメ科草は鼓張症誘因物質の1つと考えられるサポニン様物質も多量に含有する。本研究ではシロクローバ採食後のルーメン液の泡沫安定性、シロクローバ蛋白の消化過程、ルーメン運動、草蛋白のルーメンバイパス等をルーメンおよび十二指腸カニューレ装着羊を用いて調べた。主な成果は以下の通りである。 1).反芻家畜によるシロクローバ採食性:シロクローバ・イネ科混在では家畜の採食高揚時には短時間で多量のシロクローバが採食され、ルーメン液起泡性は増加するが、やがてイネ科草が採食されるようになる。安定した採食状況下では両草が一定の割合で採食され、ルーメンの起泡性も低く保たれる。 2).反芻家畜のシロクローバ採食時のルーメン特性:シロクローバ採食2時間後、ルーメン液の泡沫安定性は顕著に高くなり、ルーメン内揮発性脂肪酸(VFA),アンモニア態窒素濃度が有意に上昇する。イネ科草にくらべシロクローバ給与では採食・反芻中のルーメン収縮頻度が増加し、全行動を通じてその振幅が減少した。またプロトゾア密度も上昇する。 3).反芻家畜のシロクローバ採食時に生ずるルーメン内泡沫形成と摂取草の栄養素利用性:ルーメン液中のサポニン濃度と泡沫安定性には強い相関があり、サポニンは泡沫安定性に寄与する一方で、ルーメン微生物による分解をうけ消失する。この様なシロクローバ採食時にルーメン中に形成される泡沫は、シロクローバ採食後の急激なルーメン発酵を抑制し、下部消化管流入窒素(バイパス蛋白)量を増加させる働きをする。 シロクローバ・サポニンによるルーメン内泡沫化は、従来反芻家畜の鼓張症発生要因とされてきたが、シロクローバ含有窒素を家畜生産に効率よく結び付ける上で、栄養学的に重要な機能も有することが明らかとなった。
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