平成8年度は、研究の出発材料であるカゼイノグリコペプチド(CGP)をチーズホエーより調製し、化学的および生物学的手法により、N-アセチルノイラミン酸(NANA)を含むシアリルラクトース糖鎖を新規導入したネオ糖タンパク質(ネオCGP)を作出した。また、結合糖鎖の修飾度およびそれらの正確な化学構造を詳細に検討した。 1 市販のチーズホエーパウダー(CWP)を出発材料にし、先に著者らが開発したアルコール分画・イオン交換法によりCGPを調製する。 2 ラクトース(Galβ1-4Glc)またはN-アセチルラクトサミン(Galβ1-4GlcNAc)を、(1)炭酸水素アンモニウム・アンモニア水溶液中で、直接C-1水酸基をアミノ基に置換する、(2)パラアミノフェニル誘導体化し、または(3)アミノカルボニル反応の3種の化学低合成法により、まず中性2糖糖鎖をCGPに新規導入した。 3 牛胎仔血清中のシアル酸転移酵素能を利用し、CMP-NANAよりシアル酸分子を既に導入した中性2糖糖鎖の非還元末端のガラクトース残基に転移させ、N-アセチルノイラミニルラクトース糖鎖とした。 4 このようにして、新たに作出されたネオ糖タンパク質(ネオCGP)を60度下でのヒドラジン分解により、結合しているO-グリコシド型糖鎖を切り出し、ピリジルアミノ化により蛍光ラベルしてHPLC分析により、その導入度を評価した。 5 完全な導入糖鎖の化学構造は、著者らが通常行っている単糖分析(GLC、HPLC)、メチル化分析(GC-MS)およびNMR分析等により総合的に確認した。 来年度は、トキシン中和活性の高感度分析法を開発し、この手法を用いて本年度作出したネオ糖タンパク質(ネオCGP)のコレラトキシンの中和活性の増強度を測定する予定である。
|