研究概要 |
牛乳κ-カゼイノグリコマクロペプチド(CGP)がTリンパ球の増殖を抑制することは、既に筆者の研究グループが明かにしているところであるが、まず、その抑制機構について検討を行った。その結果、牛乳CGPはマクロファージに結合し、マクロファージにインターロイキン-1レセプターアンタゴニストを生産させることと、CD4+Tリンパ球に結合し、インターロイキン-2レセプターの発現を阻止することがTリンパ球の増殖を抑制することを明かにした。次いで、牛乳CGPのマウスへの経口投与が抗体生産に及ぼす影響を調べた。その結果、牛乳CGPを含む飼料で5週間飼育したマウスにおいて、経口抗原と腹腔内に投与した抗原に対する抗体の生産が、CGPを含まない飼料で飼育した場合と比べて有意に低下していることを明かにした。 一方、人乳からカゼインを調製し、キモシン消化後、人乳CGPを分離し、そのリンパ球の増殖に対する作用や抗体生産に対する作用を調べた結果、人乳CGPもリンパ球の増殖を抑制するとともに、抗体生産を抑制することが示された。加えて、人乳CGPには牛乳CGPには見られなかった細胞傷害性があることを見出した。そこで、人乳CGPの細胞傷害性について検討を行い、細胞傷害はT,B両リンパ球に対して起こるが、単球/マクロファージに対しては起こらないこと、細胞傷害はアポトーシスの誘導であることを明らかにした。
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