研究概要 |
ほふく茎のマ-キング法をさらに改良し,シロクローバの個体ダイナミクスを測定した。対象とした個体は,ペレニアルライグラス主体草地の慣行放牧区のものである。分節(モジュール)をユニットとしたメタ集合体として個体をとらえ,個体を構成する各ほふく茎ごとに全モジュールの出生,死亡,被食による消失,伸長の方向と量を定期的に記録したほか,発根,分枝,頭花の出現も記録した。さらに,光合成器官である葉のサイズと寿命も測定した。その結果,節モジュールの動態・サイズパラメータの値が季節によって著しく変動し,それを反映して個体の空間的拡がりも劇的に拡大/収縮しやすいことを発見した。さらに調査期間中に個体の分断現象も観察され,分断化の全容とその要因をつかむことができた。被食パターンについては,ほふく茎だけでなく,節モジュール・葉のパターンも詳細につかむことができた。 一方,慣行放牧区と超集約放牧区の間で個体ダイナミクスを比較した結果,当初の2つの仮説,すなわち,(1)超集約放牧下ではシロクローバ個体に均一かつ強い被食ストレスがかかり,放牧ロ-テーションを短縮した場合にその影響が増大する,(2)その結果,シロクローバ個体が被食ダメ-ジと矮小化反応によってサイズを激減させ,個体全体の死亡リスクを高める,を支持するデータがえられた。
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