研究概要 |
乳業用乳酸菌、特にL,bulgaricusの乳中での生育機構を明らかにするため、本研究では次のような実験成果を得た。 1、L.bulgaricusが使用されている発酵乳ヨ-グルトの乳蛋白の分解について電気泳動で調べた。その結果、乳蛋白カゼインは顕著な分解は認められず、また明瞭な分解産物も検出されなかった。しかし、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)でペプチドを調べた結果、多数のペプチドが見出された。これらペプチドの一次構造をアミノ酸組成とN-末端配列から決定したところ、その多くはβ-CN由来のペプチドであった。また、決定されたペプチドはβ-CNの40-100と160-209残基の二つの領域に局在していた。k-CN由来ペプチドも同定されたが、as1-とas2-CNからは見出せなかった。 2、同発酵乳からプロティナーゼをDEAE-トヨパールクロマトグラフィーで分離したところ少なくとも2種類の活性画分(LP-1,2)が得られ、この培養物中には少なくとも2種類以上のプロティナーゼが存在することが知られた。活性の高いLP-1をさらに高度に生成しその性質を調べた。その結果、本酵素はDIFPで失活し至適pHを6.0に有するセリンプロテアーゼであった。本酵素をカゼインに作用させたところas1-とk-CNをほんど分解せずβ-CNをよく分解する酵素であった。カゼインの分解生成物ペプチドを逆相系カラムを用いたHPLCで調べた結果、得られたペプチドはβ-およびas2-CN由来のペプチドであった。また、β-CN由来ペプチドは、発酵乳から見出されたβ-CN由来のペプチドど一致するものが見出された。従って、発酵乳中のβ-CN由来ペプチドは本酵素によって生成された可能性が考えられた。
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