研究概要 |
本研究は、牛と羊をモデルとして、(1)生体微透析システム(in vivo MDS)を過排卵処置によって形成させた10個前後の黄体(1頭当たり)に直接埋め込み、ペリスタルテイック・ポンプを用いてリンゲル液で潅流し、それをフラクション・コレクターで採取する、(2)屠場で得た牛黄体を用いたin vitro MDS、(3)牛黄体細胞と牛卵胞由来黄体化細胞の培養系、の3つの異なる実験手法を駆使して行い以下の成果を得た。 1)最も安定した分泌機能を持つ中期黄体にMDSを埋め込み(牛in vitro MDS・羊in vivo MDS)、黄体内微環境をET-1に感作させたところ、P分泌を弱く抑制し、一方OT分泌を刺激した。この作用は、PGF2αに前感作させるとより強くなり、PGF2αとET-1に同時に感作させると最も強いP分泌抑制効果を示した。本モデルではPGF2α自身はP分泌を抑制できないことから、黄体退行時のET-1とPGF2αとの協調作用の可能性が示された。 2)黄体期中期の牛・羊にPGF2αを注射し、前もってMDSを埋め込んである黄体を退行させた。そして、MDS黄体潅流液(黄体内局所)、卵巣静脈血(黄体から血中への放出)および末梢血中(全身への放出)のP,ET1およびOTを測定した。P分泌は全ての部位で注射直後から減少した。ET-1分泌は黄体内では注射直後から上昇し始めその後3日間高値を維持した。両血中値も徐々に上昇したが、特に卵巣静脈血中では、注射直後から12時間は末梢血中より高値を示した。このことから、PGF2αによる黄体退行開始時から黄体内ET-1濃度が上昇することが初めて明らかになった。 3)ET-1は、黄体細胞と5日間培養で黄体化した卵胞細胞の両細胞群のP分泌に対して大きな影響を及ぼさなかった。しかし、PGE2分泌にはTNF-αと協調して刺激作用を示した。このことから、ET-1のP抑制作用には正常な細胞間接着が必要不可欠であると推察された。以上の一連の結果より、ET-1が黄体退行現象の黄体内調節因子として必須の役割を果たしている可能性が示された。
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