研究概要 |
1、豚卵子-卵丘複合体(pCOC)は成熟分裂を開始するために培養20時間以内にmRNAの合成が必要であることが分かっていた。そこで培養前のpCOCと20時間培養後のpCOCからmRNAを単離してRT-PCRによるディファレンシャルディスプレイを用い卵子成熟を制御する遺伝子の同定を試みた。その結果20時間培養後のpCOCに特異的と思われるバンドが複数検出された。この中から6本のバンドを選んでサブクローニングし、合計44個のクローンを得た。これらをプローブとして新たに作成したcDNAライブラリーより実際に20時間培養後のpCOCに特異的に発現している遺伝子を探したが、現在までのところいずれのクローンも培養前と20時間培養後のpCOCの両者に発現している事が明かとなり、20時間培養後の特異的な遺伝子は得られていない。ディファレンシャルディスプレイからは、まだ多数の候補バンドが存在するので今後さらにサブクローニングの数を増やして検討していく予定である。 2、卵成熟を制御する卵細胞内因子の変化に関してはp34^<cdc2>、サイクリンB、c-mos,MAPキナーゼについて調べた。p34^<cdc2>、サイクロンBに関しては特に成熟卵における、結合状態、リン酸化状態について豚とマウスで比較した。その結果マウスではサイクリンBの合成と分解は平衡状態にあり濃度の変化はないが、豚ではサイクリンBの分解が遅く、過剰のサイクリンBはcdc2と結合した後リン酸化されてpre-MPFとして蓄積されることが明かとなった。c-mosの卵成熟に対する役割についてはマウス卵で実験を行い、成熟の開始には不必要だが第一減数分裂から第2減数分裂への移行に必要であることが示された。MAPキナーゼの作用については豚卵子で実験を行い、成熟分裂開始直前に細胞質から核内へ移行すること、核内へ移行した活性型MAPキナーゼは卵成熟を誘起することがあきらかとなった。
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