前年度の研究において、ニワトリの下垂体前葉においてLHの排卵前の放出に先立ち、LHの合成が促進されていることが明らかとなった。これに対して、PRLの合成は排卵周期中において見かけ上有意な変動は見出されなかったが、産卵鶏と休産鶏において共に、一日の午前4時にPRLの放出が認められた。そこで、本年度の研究においては、このPRLの放出機構を明らかにする一つの手段として、鳥類のPRLの放出に対する生理的意義の大きいと思われるVIPとAVTにおいて灌流培養系を利用してニワトリ下垂体前葉の前部腺体と後部腺体からのPRL放出に対する効果を検討し、さらにPRLの放出に影響を与えると思われるいくつかのペプチドについてもその効果を検討した。また併せてGHの放出に対する効果を検討することによって、PRLとGHの放出物質の関連についても明らかにしようとした。 その結果、ニワトリ下垂体前葉の前部腺体と後部腺体からのPRLおよびGHの放出はPRLにおいては後部腺体に比べ前部腺体、GHにおいては前部腺体に比べ後部腺体の自然放出量が高いことが明らかとなり、さらにPRLは視床下部抽出液、VIPおよびAVTの添加による放出の刺激は前部腺体にのみ認められ、GHは視床下部抽出液の添加による放出の刺激は後部腺体にのみ認められたことから、PRLの放出は前部腺体、GHの放出は後部腺体に依存していることが明らかとなった。さらにPRLの放出はVIPとAVTのみならずTRHおよびAngiotensin-IIによっても影響を与えることが示唆された。またこれらのPRL放出に関与するペプチドはGHの放出に影響は与えないことが示唆された。
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