研究概要 |
ブタおよびウシの卵巣から切り出した直径0.5〜0.7mmの初期胞状卵胞から卵母細胞-顆粒膜細胞複合体を採取し,コラーゲンゲルに包埋して培養した。 1.ブタ卵胞の卵胞腔形成に及ぼすFSHおよびEGFの影響:培養1日後,卵母細胞-顆粒膜細胞複合体は一旦閉じた構造を形成した。培養2日以降,FSH無添加区ではこの構造に変化は認められなかったが,FSH添加区では卵母細胞う-顆粒膜細胞複合体は卵胞腔様の構造を再形成し,その形成率は培養2〜3日後に最高となった。形成された卵胞腔様構造の内部の液には,体内で形成された卵胞腔内の卵胞液と同様なタンパクが検出された。EGFは顆粒膜細胞を増殖させたが,卵胞腔の形成を誘導しなかった。 2.ブタ卵胞の卵胞腔形成に及ぼすdbcAMPおよびエストロジェンの影響:dbcAMPは卵母細胞-顆粒膜細胞複合体の卵胞腔の形成を誘導したが,エストロジェンは誘導しなかった。FSHによる卵胞腔の形成がcAMPを介して起こることが示唆された。 3.ウシ卵胞の卵胞腔形成に及ぼすヒポキサンチン,FSHおよびEGFの影響:ブタとは異なり,ウシの卵母細胞-顆粒膜細胞複合体はFSH無添加培養液中においても卵胞腔を形成した。ヒポキサンチンおよびFSHは卵胞腔形成率を増加させた。一方,EGFは顆粒膜細胞を増殖させたが,卵胞腔の形成を誘導しなかった。 4.卵胞腔形成に及ぼす卵母細胞の影響:FSHあるいはdbcAMPは,卵母細胞を除去した壁顆粒膜細胞に卵胞腔の形成を誘導した。しかし,培養日数の経過とともにこの構造を消失した。一方,卵母細胞を含む壁顆粒膜細胞において形成された卵胞腔は長期間維持され,卵母細胞が卵胞腔の構造維持に機能していることが示唆された。
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