各発生ステージ特異的に発現する遺伝子断片の探索を行うことを目的として、マウス胚および肝臓を用いたDifferential display(DD)の条件検討を行うと共に、体外受精により作出したウシ胚より、RNAの抽出、cDNAの合成、PCRによる増幅とゲル電気泳動によるDNA断片の分離・解析を行い、以下の結果を得た。 1.マウス胚および肝臓を用いたDifferential display(DD)の条件検討 逆転写(RT)-PCRにより、マウス初期胚と肝臓ならびにウシ初期胚の全てのステージにおいてβ-アクチン断片(267bp)の増幅がみられ、cDNAの合成が確認された。次に、マウスの肝臓のcDNAを用いてDDに用いるプライマーの選抜を行いDDを行った。その結果、マウス初期胚(2細胞期〜胚盤胞期、内細胞塊(ICM)、栄養外胚葉(TE)において、2〜4細胞期にのみ発現し8細胞期以降に消失するDNA断片(580bp)と、逆に8細胞期以降にのみ発現したDNA断片(450bp、790bp)が認められた。さらに、胚盤胞期胚、ICM、TEを比較した結果、胚盤胞期胚とICMに発現した共通の断片(950bp)が存在し、逆にTEにのみ発現した断片(400bp)が存在した。 2.ウシ初期胚の遺伝子発現におけるステージ特異性 ウシ初期胚(2細胞期〜胚盤胞期、ICM、TE)では、2細胞期に存在し5細胞期以降に消失するDNA断片(670bp)が存在し、逆に、5細胞期以降に出現するDNA断片(750bp)が存在した。また、8細胞期〜胚盤胞期で発現した断片(1.5kb、2.0kb)と、2細胞期の正常胚にのみ発現し、停止胚で欠損していた断片(180bp、340bp)も確認された。ICMとTEの比較では、TEにのみ発現した断片(340bp、550bp)が確認された。今後、これら発生ステージ特異的に発現したDNA断片のクローニングを行い、シークエンスを行う予定である。
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