研究概要 |
本研究は、MDV潜伏感染細胞内において発現するウイルス遺伝子の解析を目的とする。本年度は潜伏感染に関連するMDV転写物(LAT)の同定と切片上でのMDV転写物の検出技術の確立を実施した。そのため、第一にMD腫瘍株化細胞を用いた潜伏感染特異性転写プローブ群の作出を行った(遠藤)。試験管内で潜伏感染を維持しているMD腫瘍株化細胞はMD潜伏感染のモデルであるが、偶発的にウイルスが活性化した細胞が出現することによりLATの同定が困難であった。我々は、腫瘍株化細胞のmRNAからcDNAを合成したのち、PCR法とサザンブロットハイブリダイゼーションによって転写物を検出する高感度なRT-PCR法と、偶発的にウイルスが活性化した細胞を含まない少数の細胞集団での解析により、LATを同定した。LATの決定過程において増幅されたLATに加えてICP27,DNAポリメラーゼ、US3,A41,gA,gB,チミジンキナーゼおよびUL50の遺伝子断片をプローブ作成用プラスミドに挿入した。一方、これらの作業と平行して、MDV転写産物を切片上で検出するためのハイブリッド組織化学法をLAT近傍領域のDNA断片を用いて確立した(遠藤・昆)。すなわち、遺伝子断片が挿入されたプラスミドからジゴキシゲニン標識されたRNAプローブ(非RI-RNAプローブ)を作出し、パラホルムアルデヒド固定後パラフィン包埋されたMDV腫瘍株化細胞および崩壊感染細胞の切片上でこのプローブの相補的な配列を持つ転写物を検出した。
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