研究概要 |
齧歯類の着床〜胎盤形成期において、間膜腺・基底脱落膜に局在する子宮NK細胞の機能は未だ不明であるが、細胞傷害性タンパクであるperforinを持つことから、流産に関連しているとの仮説がある。本研究の目的は、流産と子宮NK細胞の生殖免疫学的関連、特に流産に際しての子宮NK細胞の動態を明らかにすることである。 流産マウスモデルとして、♀CBA/2J(H-2^k)×♂DBA/2(H-2^d)を用いた。これは自然流産モデルで、妊娠満期には正常・流産吸収等の様々な段階の胎子がみられる。このモデルの妊娠10,12および14日で、流産および正常の各胎盤を採取し、PAS染色、免疫組織化学的手法によるperforin含有細胞およびasialoGM1陽性細胞の分布・動態、さらに電顕による微細構造を比較検討した。 妊娠10〜14日は胎盤の形成〜完成期で、子宮NK細胞は間膜腺・基底脱落膜で有意に見られる。この時期での流産率は40.5%(17/42)であった。perforin陽性、asialoGM1陽性の子宮NK細胞は、流産胎盤においても間膜腺・基底脱落膜に局在し、退行性変化を示す胎盤迷路部や胎子遺残物に侵襲している象は観察されなかった。その数は正常と比較して有意差はなく、perforinは依然として顆粒内に含有されており、流産に際して分泌された形跡は見られなかった。また、顆粒の微細構造的特徴である中心に均一な電子密度の芯および周囲の膜性帽子状構造に変化は見られなかった。 以上の結果は、子宮NK細胞が流産には関連しないことを示唆している。現在、本モデルでのB・Tリンパ球およびマクロファージの動態を検討中である。
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