乳腺は様々なホルモンや成長因子によりその発育や形態学的変化を遂げているため、それらホルモンや成長因子の働きをそれぞれ明確にすることは困難である。乳腺細胞の研究手段としてコラーゲンゲル内に細胞塊を包埋すると、乳腺同様に3次元的に細胞が発育し、より生態に近い条件でホルモンや成長因子の影響を検索できる。上皮小体ホルモン関連タンパク(PTHrP)は泌乳中の乳腺から産生され、生物活性を有する形で乳汁中に存在する。本研究では乳腺上皮細胞から産生されている上皮小体ホルモン関連タンパク(PTHrP)の産生機構を解明する目的で乳腺上皮細胞の3次元培養を行った。 分娩後1週間以内の乳牛より採材した乳腺組織をコラゲナーゼを用いて腺房に分散し、凍結保存した。ラットの尾腱より抽出したコラーゲンに包埋培養したところ培養2ないし3日目より樹枝状の増殖が観察され、培養10日目前後からゲルの収縮がみられた。培地に15%濃度のウシ胎子血清を加えた培養上清中のPTHrP濃度をラジオイムノアッセイ法により測定したところ、2〜4ng/mlの産生が見られたが、無添加培地では1〜2ng/mlと有為に低下した。パラフィン切片を作成し観察したところ、立方上皮ないしは立方円柱上皮細胞からなる乳管様の腺腔構造がみられ、4種類の抗PTHrP抗体、PTHrP(1-34)、PTHrP(1-36)、PTHrP(15-34)、PTHrP(34-53)を用いて免疫染色を行ったところ、いずれの抗体に対しても上皮細胞が陽性に染まった。 ヒトPTHrPのcDNAの塩基配列を参考にプライマーを合成し、培養細胞からRNAを抽出してReverse Transcription-Polymerase Chain Reactionを行ったところバンドが検出された。このDNAフラグメントをもとにプローブを作成しノーザン解析を行ったところ、1.6kb付近でトランスクリプトが検出された。
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