研究概要 |
マウスの小腸や大腸の自然発生腫瘍は少ない.当研究所で維持している無菌(GF)BALB/cマウスの小腸にポリポ-ジスが高率に発生するが,通常化(CV)したマウスでは著しくその発生率が低くなることが認められている.そこでクロロフォルム耐性菌(CRB)を含む種々の腸内細菌を定着させたノトバイオート(GB)BALB/cマウスを作製し,それらの菌の小腸ポリポ-ジスにおよぼす影響を検討した. 実験にはGF動物,CV動物,およびGB動物を用いた.CRB定着マウスは,通常マウスの盲腸内容物をクロロフォルム処理し,1000倍希釈した液を無菌BALB/cマウスに経口投与することにより作出した.GFおよびGB動物は放射線滅菌(50kGy)した固形飼料およびオートクレーブ滅菌した水道水を自由摂取させ,プラスチックフィルムアイソレーター内で飼育した.実験期間中に他の細菌の汚染は認められなかった.CV動物はGF動物と同様の環境条件にした通常の飼育室で非滅菌飼料および水道水を自由摂取させた. 動物は12ヶ月齢でCO2麻酔で屠殺し,小腸のポリ-プの数を光学顕微鏡ならびに走査電子顕微鏡にて検討した.ポリ-プの発生は幽門部から200mm以内の小腸に分布していた.ポリ-プの病理組織学会検索で,いずれの群のものも悪性化は認められなかった. ポリ-プ症の発生頻度およびマウス1匹当りのポリ-プ数は,GF群は74%,2.8個であり,CV群は34%,0.8個であったのに対し,GB3(E.ccli)群は95%,6.4個と高い値を示し,その他の単一菌投与群はGF群を中心として様々であったが,CRB群は16%,0.2個と低く,CV群並みの値を示した.これらの結果から,通常マウスから分離したCRBは少なくともBALB/cマウスの小腸のポリ-プ症を抑制する腸内菌叢の構成員であることが示唆された.
|