研究概要 |
無菌(GF)BALB/cマウスの小腸には高率にポリ-プが発生する。しかし、このポリ-プは悪性化しないことが認められている。そこで、消化管に対して発癌性のあることが知られているN-methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine(MNNG)、および1,2-Dimethylhydrazine dihydrochloride(DMH)の投与による、GFBALB/cマウスの小腸ポリポ-シスにおよぼす悪性化を試みた。 GFBALB/c♀マウスに体重(kg)当り20mgのDMHを腹腔内注射した。実験群は、GF対照群、MNNG-若齢(Y)群(8週齢より21週間投与)、MNNG-成獣(A)群(30週齢より15週間投与)、DMH-若齢(Y)群(8週齢より週1回で5回投与)、およびDMH-成獣(A)群(30週齢より週1回で5回投与)の5群を設けた。動物は12ヶ月齢で小腸のポリ-プの数および大きさを測定した。ポリ-プ症の発生率はχ2検定、ポリ-プの発生数は順位和検定(Kruskal-Wallis検定)、およびポリ-プのサイズについては一元配置分散分析後の多重比較(Tukey法)により統計処理を行った。 各実験群のポリ-プ症の発生率は、対照群(60%)と処置群(MNNG-A;69%、MNNG-Y;92%、DMH-A;80%、DMH-Y;89%)それぞれとの間では有意な差は認められなかったが、対照群(60%)と処置群全体(82%)との間では発生率が有意(p<0.05)に増すことが認められた。また、発癌物質の種類による差をみると、対照群(60%)とMNNG投与群(79%)およびDMH投与群(84%)との間では有意な差は認められなかった。つぎに、マウス1匹当たりのポリ-プの発生数をみると、すべての発癌物質投与群で対照群と比べて有意ではないが高い傾向がみられた。また、ポリ-プのサイズについては有意な差は認められなかった。このように、すべての投与群において対照群に比べてポリ-プ症の発生率が増加したことから、このBALB/cの自然発症小腸ポリポ-シスは、今回用いた発癌物質いずれによっても、その発症が促進されることが明らかにされた。
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