1.まず本研究目的の1つとして、ライム病の疫学を解明する一環として、年間を通じた継続的調査報告が殆ど無い野ネズミでの疫学調査を行うことを計画した。そこでライム病存在地域の野ネズミを定期的(1回以上/月)に捕獲し、膀胱および皮膚からの菌分離を行った。結果として本年度までに329匹の野ネズミを捕獲した。その内、本研究費により本年度は10回の調査で133匹が捕獲された。しかし、1月、2月の捕獲頭数は依然として合計26匹と少なく、また3月、4月はまだ調査を行っていないため年間を通したデータは不十分であるが、現在までのところでは菌が分離された月は6月と11月に限定している。抗体の保有率は約5%で分離率は2.5%であることが明かとなった。 2.またライムボレリア菌には有力な分離培地が開発されていないために、少量の菌を含む材料や汚染された材料では分離が困難であることから、モノクローナル抗体を用いた抗原捕獲検出およびPCRによる菌体DNA検出という検出感度を高める方法を開発することを計画した。その結果、現在ライム病菌4種類より20種類のモノクローナル抗体を作成したが、ELISAおよびWester n Blotting法により解析したところ、4菌種に共通する分子量約41Kdの鞭毛抗原を認識しているモノクローナル抗体が10種類ほど作成された。現在これら、共通抗原認識モノクローナル抗体を用いてサンドイッチ抗原捕獲法の条件を検討中である。ライムボレリア菌には少なくとも4種のgenotypeが知られていることから、PCRでDNA検出と同時に菌種同定も併せて行える系を確立することを計画した。現在PCR法は現在5種類のプライマーを作成し、nested-PCRも含めて検討中である。上記サンドイッチ法も含め、抗原検出およびDNA検出のための材料も本年度の野ネズミの捕獲調査により、ほぼ十分確保されたので抗原捕獲法とPCR法の条件が決定次第、実験開始可能な状態である。 4.検査成績比較と発表:まず保菌率や抗体保有率の統計処理(動物種別、性別、体重別、月別、季節別など)の結果ならびに作成モノクローナル抗体について、口頭発表と論文発表を次年度行う予定である。
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