ライム病の重要なレゼルボアと考えられる野鼠を茨城県県北部山地で地域を限定、かつ継続的に捕獲を行い疫学調査した。結果として合計378匹の野鼠を捕獲し、その種類はアカネズミ(アカ)が291匹、ついでハタネズミ(ハタ)が60匹であった。この野鼠の抗体がプロテインG(PG)と結合することが本研究で明かとなったので、4種のライムボレリア菌を抗原としてPG-ELISAによる抗体測定系を確立し、抗体検査を行った。さらに、今回新たに改良を加えたPG-ELISAでネズミ以外の野性動物における抗体調査も行った。アカの14.6%は抗体を保有していたが、高い抗体価は僅か4.9%に過ぎなかった。またハタでは36.7%で抗体を保有し、77.3%は高い抗体価を示した。季節別には、2月に最も抗体価の低い時期があり、5月より抗体価は上昇し、7月から10月には高い抗体価の個体が存在し、以後それほど高い抗体価を持つ個体は無くなるものの抗体陽性個体は存在し、12月までに全体的な抗体価は低くなる傾向があった。しかし、1月にも比較的高い抗体価を示す個体も認められることや、1月の平均抗体価が12月よりも高いことから、本病の疫学にはマダニとの強い関連のみならず、宿主の繁殖期や、冬場の生活形態、渡り鳥など色々な要因が関連していると考えられた。また野鼠の場合、長期間の抗体の持続はないと考えられた。アカの場合、サイズ(年齢)別では体重大(高齢)なほど抗体価は高くなることが判った。調査地域での菌分離培養では、春と秋に限って菌が分離された。また、その分離培養疫をPCR法にて菌DNA検出を試みたところ、分離陽性はPCRも陽性であった。分離菌は菌体DNAをPCRで増幅し、制限酵素で消化しフラグメントの多型で比較するRFLP法および作成ポリクローナル血清で同定を行った。ネズミに菌を接種して飼育環境温度の違いによる保菌状況を検討したが、低温の(冬期の)状態の飼育でも保菌状況に変化が無いことが判った。すなわち、報告されるようにマダニでは低温で早期に菌は消失してしまうが、動物ではそれが認められないので少なくとも冬期の間は、野鼠と限定できないが、動物体内で菌が越冬するものと考えられた。以上の内容は口頭発表し、論文(1編印刷中、2編投稿中)にて発表予定である。
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