研究課題/領域番号 |
08660379
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
西村 亮平 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (80172708)
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研究分担者 |
望月 学 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助手 (90261958)
佐々木 伸雄 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60107414)
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キーワード | 硬膜外 / 鎮痛 / ブピバカイン / オピオイド / ブトルファノール / ブプレノルフィン / モルヒネ / 疼痛 |
研究概要 |
本年度は、平成8及び9年度のラットを用いた実験結果を元に、犬の臨床例で手術を受けるものに対し、モルヒネあるいはモルヒネを用いない硬膜外鎮痛法を行いその術後鎮痛効果について比較検討を行った。 まずモルヒネの硬膜外投与を行った手術例75頭と、モルヒネ投与を行わなかった44頭の術後鎮痛効果について比較を行った。疼痛の状態は、動物の状態および術創に軽く触れた時の反応から判定した。その結果、モルヒネを投与した群においては、モルヒネを投与しなかった群に比べ、明らかな鎮痛効果が最大約24時間得られた。これは体表の手術、開腹手術、整形外科手術のいずれにおいても同様であり、犬においてもモルヒネの硬膜外投与が高い術後鎮痛効果を示す事が明らかになった。しかし骨盤の多発性骨折、胃全摘術など痛みの強い例では十分な効果が得られない場合が少数例あった。 この結果を踏まえ、さらに前年度までの結果を元に、モルヒネなどの麻薬を使用しないで、硬膜外投与による十分な術後鎮痛効果が得られるか臨床例で検討した。対象動物は、3-13歳齢の犬の待機手術例4頭とした。対象動物の体重は5.4-22.9kgで、手術内容は、乳腺腫瘍摘出術、骨盤内腫瘤摘出術、会陰部腫瘤摘出術、および股関節脱臼の治療のための大転子の転移術であった。これらの症例に対し、麻酔前投与と麻酔導入後、硬膜外にプピバカインおよびブプレノルフィンを投与した。術後の疼痛の程度は、前項と同じ方法を用いて行った。その結果4例中3例では、十分な鎮痛効果が得られ、モルヒネ投与時と同様な効果が得られた。他の骨盤内腫瘤の1例では、鎮痛効果が十分持続せず、モルヒネの全身投与を加えた。このようにモルヒネを用いなくても、モルヒネに匹敵する術後鎮痛効果が得られる事が明らかになった。ただし十分な効果が得られない例もあるため、さらにさまざまな鎮痛法を組合わせる必要もあると考えられた。
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