研究概要 |
本研究では、麻薬を用いない硬膜外鎮痛法を確立することを目的に検討を行い、以下の結果を得た。 1) ラットにモルヒネ(Mor)を硬膜外投与すると、体性痛、内臓痛の両方に対して強力な鎮痛効果を示した。一方鎮静薬(メデトミジン:Med)、トランキライザー(ミダゾラム:Mid)、麻酔薬(ケタミン:Ket)及び麻薬指定のないオビオイド(ブトルファノール:But、ブブレノルフィン:Bup)を単独で投与した場合には、いずれも十分な鎮痛効果を得る事はできなかった。またMor以外の2種類の薬剤を組み合わせて硬膜外に投与した場合にも、体性痛、内臓痛の両方に非常に有効なものはなく、Morと比較するとその鎮痛効果は十分とはいえず、これらの薬剤で十分な術後疼痛管理を行うことは困難であると考えられた。 2) 高用量の局所麻酔薬(リドカイン、ブピバカイン:Bupi)をラットの硬膜外に投与するとMorに近い鎮痛作用が得られたが,持続時間は短く,運動失調が顕著であった。一方Bupiと非麻薬系の鎮痛作用を持つ薬剤を組み合わせると、Bupi+But,Bupi+Buprの組み合わせにおいて強力な鎮痛効果が得られた。とくにBupi+Buprでは体性痛・内臓痛においてMorに近い鎮痛効果が、運動麻痺などの顕著な副作用を示すことなく比較的長時間得られ、Morに代わる硬膜外鎮痛薬として有望であると考えられた。 3) 以上の結果を基に、さまざまな手術を受ける犬の臨床例にMorあるいはBupi+Buprを硬膜外に投与したところ、Morでは、大部分の例において十分な術後鎮痛効果を得る事が出来た。一方Bupi+Buprにおいても、Bupiの用量をラットで結果から推定される用量よりもやや増す事によって、比較的強力な鎮痛効果を得る事が出来た。従って、Bupi+Buprの組み合わせは、Morに代わる硬膜外鎮痛法として有用であると考えられた。
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