食鳥処理場に搬入された食鳥鶏の豚丹毒菌の保有状況、鶏肉における本菌の汚染状況および食鳥解体施設の環境調査などを行い、以下の成績を得た。 1.鶏における豚丹毒菌の保有状況:1)長野県下の1食鳥処理場に66農家から搬入された鶏750羽における豚丹毒菌の保有率は、皮膚(15.7%)、皮下(7.3%)、呼吸器(1.9%)、脱羽毛(59.2%)で極めて高率であることが明らかになった。2)豚丹毒菌の農家別分離状況は、豚丹毒菌がまったく分離されなかった農家が11軒(16.7%)、ロットによって分離状況に違いが認められた農家が21軒(31.8%)、常に豚丹毒菌が分離された農家が34軒(51.5%)で、本菌が養鶏場に高率に浸淫していること、浸淫状況には農家集積性がみられることが判明した。3)鶏から分離された豚丹毒菌の血清型は、型別不能(UT)が66.6%で最も多く、次いで6型(10.3%)、5型(5.2%)、2型(4.9%)、3型(4.7%)、8型(4.5%)の順であった。豚に比べてUTが著しく多かった。4)以上のことから、本調査により初めて鶏が豚丹毒菌を高率に保菌していることが明らかとなり、鶏は自然界において本菌のレゼルボアの役割を担っている可能性の高いことが示唆された。 2.鶏肉における豚丹毒菌の汚染状況ならびに汚染機序:1)食鳥処理場の隣接解体施設において採取した鶏肉における豚丹毒菌の汚染率は極めて高率で、部位別にはササミ(72.2%)で最も高く、次いでヤキトリ用鶏肉(62.5%)、ムネ肉(50.0%)、モモ肉(41.5%)の順であった。2)鶏肉から分離された豚丹毒菌の血清型は、6型(21.8%)が最も多く、次いで12型(21.0%)、8型(13.4%)、UT(11.4%)、2型(10.9%)、21型(7.6%)の順で、鶏に比べUTの分離率が著しく低かった。3)鶏肉の豚丹毒菌の汚染は、搬入された鶏の処理を通じてまず解体器具類が汚染され、その汚染が鶏肉に新たな二次汚染をもたらすという悪循環によって拡大されているものと思われた。
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