平成8年度の研究で鶏および鶏肉から分離したErysipelothrix rhusiopathiaeの鶏に対する感染性と病原性を検討した。鶏および鶏肉由来E.rhusiopathiaeは、供試した各血清型28株中4株のみが鶏(7日齢)に対して致死毒性を示した。一方、マウス(4週齢)に対しては供試28株中22株が致死毒性を示した。感染実験において、強毒株(AKO株)を鶏(7日齢)の羽を抜いた羽根部に接種した場合、菌接種後7日目まですべての個体の諸臓器等から接種菌が回収され、21日目には敗血症死する個体も観察された。筋肉内接種の場合、接種菌は菌接種後7日目まで接種部や脾臓、肝臓、腎臓などの臓器から回収される個体が認められたが、死亡する個体はみられなかった。経口投与および皮膚(正常部、創傷部)に塗布の場合、接種菌はほとんどの個体で接種後3日目以降体内からまったく回収されず、死亡する個体もみられなかった。弱毒株では、接種菌はいずれの接種経路の場合とも、接種後3日目以降体内からまったく回収されず、死亡する個体もみられなかった。また、強毒株では経口以外の接種経路では接種菌に対する抗体価の上昇が観察されたが、弱毒株ではいずれの接種経路の場合とも抗体価の上昇はみられなかった。これらのことから、鶏由来E.rhusiopathiaeには鶏に対し病原性を有する菌株が少数ながらも存在すること、ならびに皮膚の羽根部がE.rhusiopathiaeの鶏への感染経路として重要な役割を果たす可能性の高いことが示唆された。しかし、鶏および鶏肉由来株はほとんどの株がマウスに対して致死毒性を示したことから、鶏および鶏肉にみられる本菌は公衆衛生学的観点から軽視できないものと思われる。
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