食鳥処理場に搬入された鶏(ブロイラー)750羽におけるErysipelothrix属菌の保有状況ならびに食鳥肉解体施設で採取した鶏肉153検体における本菌汚染状況を検討するとともに、鶏ならびに鶏肉から分離されたE.rhusiopathiaeの鶏に対する感染実験を行い、本菌の鶏に対する感染性ならびに病原性を検討し、以下の成績を得た。1.鶏におけるErysipelothrix属菌の分離率は皮膚15.7%(118/750)、皮下7.3%(27/372)、咽頭1.9%(12/630)および羽59.2%(106/179)で部位によっては極めて高率であったが、脾臓からは本菌属は分離されなかった。また、本菌属は養鶏場66ヶ所中55ヶ所(83.3%)の鶏から分離され、広く養鶏場に浸淫していた。また、鶏から分離されたErysipelothrix属菌の血清型は、E.rhusiopathiaeでは型別不能が59.9%(178/297)で最も多く、次いで6型(11.1%)、5型(7.4%)、2型(6.4%)、8型(5.1%)21型(0.7%)の順であった。E.tonsillarumでは3型(5.1%)と7型(3.0%)がみられた。2.鶏肉のErysipelothrix属菌の分離率は32.0%(49/153)で極めて高かった。部位別の分離率は、ササミ53.1%(17/32)、胸肉28.0%(14/50)、もも肉25.3%(18/71)の順で高かった。分離菌の血清型は、E.rhusiopathiaeでは2型(17.9%)の割合が最も高く、次いで6型(16.4%)、21型(11.9%)、8型(10.4%)、12型(10.4%)、5型(4.5%)、4型(3.0%)の順であった。型別不能は16.4%で、上述の鶏(59.9%)に比べると著しく低かった。E.tonsillarumでは、3型(1.5%)と7型(1.5%)がみられた。3.鶏および鶏肉由来E.rhusiopathiaeは、供試した各血清型28株中4株のみが鶏に対して致死毒性を示した。一方、マウスに対しては供試28株中22株が致死毒性を示した。また、感染実験の結果、皮膚の羽根部がE.rhusiopathiaeの鶏への感染経路として重要な役割を果たす可能性の高いことが示唆された。4.以上、得られた成績は、本菌の自然界における生態および公衆衛生学的意義を把握し、本菌感染症の予防対策を図る上で極めて貴重な知見を提供するものと思われる。
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