平成8年度に引続いて、本研究はパルスフィールドゲル電気泳動法(PFGE)による染色体DMA解折法、リボタイピング、ランダムプライムドPCR法(RAPD)が動物由来ブドウ球菌の生態・疫学研究並びに本菌の菌種同定に適用できるかについて検討したものである。 1.北海道・富山・石川県の牛乳房炎由来S.aureusのPFGE解析では、供試菌株は各々21種、3種、7種のパターンに分けられ、多様な遺伝子型をもつ菌が牛乳房炎に関与していることを示唆し、またある調査地区では特定の菌型が長期間にわたって定着・推移していることを明らかにした。 2.鶏ブドウ球菌症から分離したS.aureusのPFGE解析では、供試株のPFGEパターンは32種で、多様な菌型が鶏ブドウ球菌症に関与していることを示唆した。 3.PFGE、リボタイピング、RAPD法を用いた動物由来S.intermediusの比較解析では、そのPFGEパターン、リボタイプ、RAPDパターンが由来動物種(ミンク、狐、鳩、犬)によって特徴がみられ、本菌には生態型が存在することを示唆した。またPFGEとリボタイピングはS.intermediusとS.aureusとの鑑別同定に応用できること、さらにPFGEはリボタイプ、ファージ型をさらに細分化するのに有用な方法であることを明らかにした。 4.馬由来S.hyicusのPFGE解析では、馬由来株の多様性を認めると共に、他動物(豚・鶏)由来S.hyicusとは異なっていることを見出した。 5.以上のように、3つの分子遺伝学的解析法が動物由来ブドウ球菌の生態・疫学研究に適応できること、また菌種同定にも応用できることを明らかにした。
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