豚丹毒菌ErysipelothrixのIgG Fcリセプターの分離・精製を試みるとともに、その免疫学的性状を調べた。豚の関節炎例由来株(血清型2)の菌体抗原に対するSPFマウス血清のELISA値は二次抗体に抗マウスIgG全分子を用いた場合に著しく高く、抗マウスIgG Fcフラグメントでは陰性であったことから、SPFマウス血清IgGのFcフラグメントと結合する抗原、Fcリセプターの存在が示された。また、抗原とマウスIgGの結合は本菌に感受性である豚、兎、羊、山羊、牛および馬のIgGで有意に抑制され、これらIgGのFcリセプターに対する強いアフィニテイが示された。一方、抵抗性であるモルモットのIgGでは抑制はわずかで、アフィニテイが弱いことが示されたことから、本リセプターが本菌の起病性に関与することが示唆された。菌体の超音波処理上清をDEAEイオン交換カラムおよび正常豚IgG結合アフィニテイカラムにかけて得られた精製リセプターはSDS-PAGEで分子量65kDのタンパクとして、免疫ブロット法ではSPFマウス血清に対し同分子量の1本のバンドとして示され、抗原性が確認された。また、本リセプターで免疫されたマウスは同・異種血清型の強毒株の攻撃に対して完全に耐過し、Fcリセプターは重要な感染防御抗原であると思われた。さらに、本リセプターは23種の血清型参照株に共通して存在することが、特異モノクローナル抗体を用いたELISAで証明された。
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