研究概要 |
近年齧歯類の肝臓には、肝細胞あるいは胆管上皮細胞への二分化能を有するoval細胞が存在することが報告されている。本試験ではマウスにみられる肝胆管癌の発生過程にoval細胞が関与しているか否かを明らかにするために行った。B6C3F1系の雌雄のマウスを2群に分け、一群にはvinyl carbamate(VC)を腹腔内に単回投与し12ヵ月間観察した。他群にはコリン欠乏食を与えながら2-acetyl aminofluorene(AAF)を15ヵ月間にわたって強制経口投与を行った。肉眼的に腫瘤形成はVC投与群では雌雄ともに投与後9ヵ月以降に認められた。AAF群の雄では12ヵ月時に初めて腫瘤が認められたが、雌では試験期間を通じて認められなかった。組織学的にはVC群では試験経過とともに肝細胞小増殖巣、肝細胞腺腫,肝細胞癌の順にそれぞれの発生率が増加した。AAF投与群では試験開始後1ヶ月時から腫瘍発生時までグリソン鞘域に軽度のoval細胞の増生がみられたが発生した腫瘍形態はVC群と同様であった。腫瘍形成前の肝細胞増殖活性はVC群でランダムに肝細胞核にみれれたが、AAF群では小葉周辺部の肝細胞ないし少数のoval細胞に認められた。肝胆管癌の発生はどの動物にも認められなかった。 以上の結果、VC投与による癌化にはoval細胞が関与しないのに対し、コリン欠乏食とAAF投与の併用はoval細胞を誘導したものの、その程度は弱く、今回の肝発癌には関与したとは考えられなかった。
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