研究概要 |
本年度の研究で肝蛭の肝臓への侵入,胆管への到達経路,胆管系の病変などについては従来の報告に記載された事実を確認し,血管系にも病変を生じることがあるという事実は確認できた。とくに門脈系においてはそれらの血管の拡張と内膜増生を疑うに足る病変を持つ症例を見出したが,不規則な内膜増生と成熟した結合組織増生のみですでに好酸球をはじめとする細胞反応が痕跡的になっていることが多く,それらを一連の動きのある病変として捉えるには至らなかった。 「好酸球性増殖性小葉間静脈炎(仮称)」と虫道や好酸球性膿瘍の共存する例,発達途上の虫体がみられ,虫体に破壊された肝臓組織に隣接して軽度ながら「好酸球性増殖性小葉間静脈炎(仮称)」類似の像が見られる例もあった。様々な程度の光学顕微鏡下でよく分化した平滑筋とみなされる細部の増殖性変化はこのようなごく軽度の血管病変を持つに過ぎない症例にも見出され,興味ある所見と考えた。 今年度の材料収集の中でわが国の牛における豚回虫寄生例の存在も明かとなり,牛の肝臓の寄生虫性病変の見直しの必要を痛感した。 本研究では,牛肝蛭症の病理の再検討を企図して食肉衛生検査で発見されるものの中から材料を収集してきた。全く予想出来なかったわけではないが,早期病変を有する肝蛭症牛の肝臓の収集は予想以上に困難で,経費の面で困難ではあるが実験的再現,あるいは肝蛭症が十分な対策を講じられること無く流行している国の研究者との共同研究の必要性を感じさせるものであった。
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