研究概要 |
(1)水田圃場にオープントップチャンバーを設け,高濃度CO2(700ppm)区、対照区を設定した。チャンバーの囲いの高さを1.5mから2mとし、ハウス栽培用の鋼鉄製パイプのアングルに固定器具でビニールを固定する方法を採用した。実験の結果、装置的には空気の撹拌、結露など改良の余地があること、高濃度CO2は分げつ、玄米重を増加し、粒重の重い穀粒が多くなることにより収量を約20%増加すること、出穂期を数日早めること、UVBは両区における生育を抑制するが、抵抗性品種ササニシキと感受性品種農林1号の間での差異は、生育初期以外では認め難かった。品種間差異は(2)の成績から、可視光の強さにより左右される。さらに、他の気象条件の影響を受けるので、次年度以降も研究を継続する。 (2)バイオクライトロンに設けた大気CO2濃度が200,350,70ppmの各区で、UVBが紫外線抵抗性の異なるササニシキおよび農林1号の生育に及ぼす影響を解析した。低CO2濃度では分げつ、乾物重は減少した。UVBはいずれの区における生育を抑制した。700ppmでは分げつ、乾物重、葉内全窒素癌含量、可溶性たんぱく質量、クロロフイル含量、Rubisco含量は350ppmの場合に比べ、高く、UVBによる生育、葉内各種窒素含量の低下は350ppmで大きかった。また、UVBの効果に対して両品種間で差異が見られ、感受性品種におけるUVBによる著しいRubisco含量の低下、UV吸収物質の増加も見られた。 (3)UV-B抵抗性品種ササニシキとUV-B感受性品種農林1号の交配F2には、UV-B感受性な親株より強いUV-B抵抗性を示す個体が作られるが、同様の結果を、ササニシキとIndicaで弱い抵抗性を示すSurjamkhiとの交配後代世代においても認めた。また、突然変異原処理によって誘発した品種金南風の突然変異株から、親品種より強い系統は得られなかったが、UV-B感受性の後代を得ることができた。UVB耐性機構の解析に有効な実験植物として使える見通しがついた。
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