研究概要 |
(1)紫外線UVBは、イネの生育、とくに分げつ、やタンパク質合成を抑制する。この様なUVBに対する感受性は第2〜4葉の展開する時期が最も高いこと、UVBによるDNA損傷(CPDの生成)も第2〜4葉で起こり易いこと、葉齢の進行に伴うタンパク質合成およびDNA損傷の光修復能は葉の抽出開始時から完全展開するまで高くなるが、その後、老化するに従い低下すること、抵抗性品種ではタンパク質合成への影響が小さく、CPDの光修復能は大きいこと、が判明した。 (2)水田圃場に設けたオープントップチャンバー内で高濃度CO_2(700ppm)がイネに生育に及ぼす影響を調べた結果、高濃度CO_2は分げつ、玄米重を増加し、粒量の重い穀粒が多くなることにより収量を約20%増加すること、出穂期を数日早めること、UVBは育成を抑制するが、抵抗性品種ササニシキと感受性品種農林1号の間での差異は認め難かった。 (3)バイオクライトロンに設けた大気CO_2濃度が200,350,700ppmの各区で、UVBが紫外線抵抗性の異なるササニシキおよび農林1号に生育に及ぼす影響を解析した。低CO_2濃度では分げつ、乾物重は減少した。UVBはいずれの区における育成を抑制した。700ppmでは分げつ、乾物重、葉内全窒素含量、可溶性たんぱく質量、クロロフィル含量、Rubisco含量は350ppmの場合に比べ、高く、UVBによる生育、葉内各種窒素含量の低下は350PPMで大きかった。 (4)UV-B抵抗性品種ササニシキとUV-B感受性品種農林1号、およびIndicaで弱い抵抗性を示すSurjamkhiとの交配F2には、UV-B感受性な親株より強いUV-B抵抗性を示す個体が作られることが判った。また、突然変異原処理によって誘発した品種金南風の突然変異株から、親品種より強い系統は得られなかったが、UV-B感受性の後代を得ることができ、UVB耐性機構の解析に有効な実験植物として使える見通しがついた。
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